障害年金の審査請求・不服申し立て

障害年金-社会保険審査会裁決例

平成23年(厚)第1033号  平成24年6月29日裁決

             主      文
後記第2の2記載の原処分は、これを取り消す。

             理      由
第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、障害基礎年金及び障害厚生年金(併せて、以下「障害給付」という。)の支給を求めるということである。
第2 再審査請求の経過
1 請求人は、慢性関節リウマチ(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成〇年〇月〇日(受付)、厚生労働大臣に対し、いわゆる事後重症による請求として障害給付の裁定を請求した。
2 厚生労働大臣は、平成〇年〇月〇日付で、請求人に対し、「障害厚生年金を受給するためには、傷病の発病日が厚生年金保険の被保険者であった間であることが要件の1つとなっていますが、現在提出されている書類では、当該請求にかかる傷病(慢性関節リウマチ)の発病日が昭和〇年〇月(厚生年金保険の被保険者であった間)であることを確認することができないため。」との理由により、障害給付を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、〇〇厚生局社会保険審査官(以下「審査官」という。)に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をした。
不服の理由は、審査請求書の「審査請求の趣旨および理由」欄及び再審査請求書の「再審査請求の趣旨及び理由」欄に記載の主な部分をそのまま掲記すれば、次のとおりである。(審査請求書の「審査請求の趣旨および理由」欄)また、昭和〇年〇月当時、障害年金を請求することは判らず、その当時の健康保険の給付記録も残っておらず、参考資料としては、ございません。しかし、昭和〇年〇月〇日にa社に入社し、その年の秋(〇月頃)頃に膝、手の痛みと腫れがあり、その年の〇〇月に初めて、病院にかかったのは間違いありませんので審査請求します。(再審査請求書の「再審査請求の趣旨及び理由」欄)まず、審査官にお願いすることは関節リウマチに関する病気に知識を持って審査していただきたい。①関節リウマチの病気は原因不明で何らかの異常により関節に炎症が起こること②自覚症状として関節痛とともにこわばり、疲れやすさがある③病気が発症して一年ほどで骨や軟骨が急速に壊れていくこのようなことなどからも、自覚症状があった昭和〇年〇月が私の関節リウマチの発症日であると認識している昭和〇年〇月に初診のd病院では変形関節炎との診断であったがすでに関節リウマチに罹患していたことが下記のことから明白になると思われる。①d病院のリウマチ専門医の〇〇ドクターの診断結果による②リウマチ患者の中にリウマチ反応が陰性である者が10%いる。よってリウマチ反応が陰性であるためにリウマチに罹患しながら、変形関節炎と誤診されるものが多数存在する③昭和〇〇年前後はリウマチという疾患は、まだまだ認知度が低く40歳台以降の高齢で発症するような認識があった。
第3 問題点
1 いわゆる事後重症による請求として障害基礎年金を受けるためには、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者である者又は被保険者であった者(日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満である者に限る。)であって、当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に掲げる障害等級1級又は2級に該当する程度の障害の状態になかったものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により国年令別表に掲げる障害等級1級又は2級に該当する程度の障害の状態に該当することを必要とするとされている。ただし、上記傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上あるか、当該初診日の属する月の前々月までの1年間のうちに保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないことを必要とするとされている(このただし書の要件を、以下「保険料納付要件」という。)( 国民年金法第30条、第30条の2第1項ないし第3項及び国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号。以下「昭和60年改正法」という。)附則第20条第1項)。
2 いわゆる事後重症による請求として障害厚生年金を受けるためには、① 疾病にかかり、又は負傷し、かつその傷病に係る初診日(昭和61年4月1日以後にある場合に限る。)において被保険者であった者、又は昭和61年4月1日前に被保険者であった間に疾病にかかり、又は負傷した者のいずれかに該当すること、② 障害認定日において、国年令別表に掲げる障害等級1級若しくは2級又は厚生年金保険法施行令別表第1に掲げる障害等級3級のいずれかに該当する程度の障害の状態になかったものが、同日以後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級1級、2級又は3級に該当する程度の障害の状態に該当すること、③ 保険料納付要件を満たすこと、を必要とするとされている(厚生年金保険法第47条、第47条の2、国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令(昭和61年政令第54号)第78条第1項及び昭和60年改正法附則第64条第1項)。
3 本件の場合、保険者は、当該傷病が発病した日(以下「本件発病日」という。)が昭和〇年〇月であることを確認できないとして障害給付を支給しない処分をし、請求人はこれに対して不服を申し立てているのであるから、本件の問題点は、まずは、本件発病日及び当該傷病の初診日(以下「本件初診日」という。)はいつかであり、次いで、前記1及び2の関係法令の規定に照らして、請求人に障害給付を支給することができるかどうかである。
第4 事実の認定及び判断
1 本件資料によれば、以下の事実を認定することができる。
⑴ b病院c科・A医師作成の平成〇年〇月〇日現症の診断書(同月〇日付。以下「本件診断書」という。)の必要部分を摘記すれば、次のとおりである。
氏名:B 傷病名:慢性関節リウマチ 傷病の発生年月日:昭和〇年頃(本人の申立て) 初めて医師の診療を受けた日:昭和〇年頃(本人の申立て) 傷病の原因又は誘因:不詳 既存障害:なし 既往症:なし 傷病が治ったかどうか。:傷病が治っていない場合・・・症状のよくなる見込 不明 
診断書作成医療機関おける初診時(平成〇年〇月〇日)所見:両上肢に運動障害、巧緻障害を認め、外観上著しい変形を認める。Xpにて両手関節、指関節に関節破壊像を認める。
現在までの治療の内容・経過等:昭和〇年にリウマチの診断を受けて以后、多数の病院で加療を受けてきている。平成〇年〇月にかかりつけ医が閉院となって以后は、リウマチについては加療を受けていない。
障害の状態(平成〇年〇月〇日現症)
脊柱の障害(脊柱の可動域)部位運動の種類前屈後屈右側屈左側屈右回旋左回旋頚部自動的〇〇 〇 〇〇 〇〇 〇〇 〇〇他動的〇〇 〇 〇〇 〇〇 〇〇 〇〇胸腰部自動的〇〇 〇〇 〇〇 〇〇 〇〇 〇〇他動的〇〇 〇〇 〇〇 〇〇 〇〇 〇〇麻痺 外観:強剛性起因部位:その他 骨性種類及びその程度:知覚麻痺(鈍麻)運動麻痺 反射上肢下肢バビンスキー反射その他の病的反射右+ + - -左+ + - -その他:排尿障害 無、排便障害 無、褥創又はその瘢痕 無
握力:右〇kg、左〇kg 手(足)
指関節の自動可動域 中手(足)指節間関節(MP)母指示指中指環指小指屈曲伸展屈曲伸展屈曲伸展屈曲伸展屈曲伸展右〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇左〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 近位指節間関節(PIP)(母指では指節間関節)母指示指中指環指小指屈曲伸展屈曲伸展屈曲伸展屈曲伸展屈曲伸展右〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇左〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇関節可動域及び運動筋力右左部位運動の種類関節可動域( 角度)運動筋力関節可動域( 角度)運動筋力強直肢位自動可動域他動動域強直肢位自動可動域他動可動域肩関節屈曲〇 〇 半減〇 〇 半減伸展〇 〇 〃〇 〇 〃内転〇 〇 〃〇 〇 〃外転〇 〇 〃〇 〇 〃肘関節屈曲〇〇〇 〇〇〇 やや減〇〇〇 〇〇〇 やや減伸展〇〇〇 〇〇〇 〃〇 〇 〃手関節背屈〇 〇 半減〇 〇 半減掌屈〇 〇 〇 〇 〃〇〇 〇〇 〃股関節屈曲〇〇〇 〇〇〇 やや減〇〇〇 〇〇〇 やや減伸展〇 〇 〃〇 〇 〃内転〇〇 〇〇 〃〇〇 〇〇 〃外転〇〇 〇〇 〃〇〇 〇〇 〃膝関節屈曲〇〇〇 〇〇〇 〃〇〇〇 〇〇〇 〃伸展〇 〇 〃〇 〇 〃足関節背屈〇 〇 〃〇 〇 〃底屈〇〇 〇〇 〃〇〇 〇〇 〃
日常生活動作の障害の程度(補助用具を使用しない状態で、一人でうまくできる場合には〇、一人でできてもやや不自由な場合には〇△、一人でできるが非常に不自由な場合には△×、一人で全くできない場合には×)
つまむ:右△×、左△×握る:右×、左×タオルを絞る(水を切れる程度):両手×ひもを結ぶ:両手×さじで食事をする:右〇△、左×顔を洗う(顔に手のひらをつける):右×、左×用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる):右〇△、左〇△用便の処置をする(尻のところに手をやる):右×、左×上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ):両手×上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる):両手△×ズボンの着脱(どのような姿勢でもよい):両手△×靴下を履く(どのような姿勢でもよい):両手△×片足で立つ:右〇、左〇座る(横すわり):〇△深くおじぎ(最敬礼)をする:〇△歩く(屋内):〇 歩く(屋外):〇△立ち上がる:支持なしでできる階段を登る:手すりがあればできるがやや不自由階段を降りる:手すりがあればできるがやや不自由
平衡機能閉眼での起立・立位保持の状態:可能である。
開眼での直線の10m歩行の状態:まっすぐ歩き通す。
補助用具使用状況:使用せず
現症時の日常生活活動能力及び労働能力:日常生活動作は上衣の更衣以外、自宅環境下では自立。家事一部困難。就労は困難(特殊なパソコン等ならば可能) 
予後:不変
備考:身障手帳、両手関節機能全廃(3級)、両手指機能障害(両手指以上)(3級)
⑵ 請求人作成の5葉の「受診状況等証明書が添付できない理由書」(いずれも平成〇年〇月〇日付)によれば、d病院(昭和〇年〇月から昭和〇年〇月まで受診)、d病院(昭和〇年〇月から昭和〇年〇月まで受診)、e病院(昭和〇年〇月から昭和〇年〇月まで受診。以下「e病院」という。)、f病院(昭和〇年〇月から昭和〇年〇月まで受診。以下「f病院」という。)及びg病院(昭和〇年〇月〇日から平成〇年〇月末日まで受診。以下「g病院」という。)のいずれについても、当該医療機関にカルテ等の診療録が残っていないとされている。また、g病院に関しては、昭和〇年〇月〇日発行の診察券が存するが、それには傷病名は記載されていない。
⑶ h病院・B医師(以下「B医師」という。)作成の受診状況等証明書(平成〇年〇月〇日付。以下「本件受診証明」という。)の必要部分を摘記すれば、次のとおりである。
・氏名:B ・傷病名:慢性多発性関節リュウマチ 
・発病年月日:昭和〇年〇月 ・傷病の原因又は誘因:不明 
・発病から初診までの経過:昭和〇年〇月頃より膝や手首、手指に痛み及び腫れを自覚、同○月にd病院受診し関節炎と判断。症状の増悪あり昭和〇年〇月d病院受診し多発性関節リュウマチと診断され投薬や関節内注射などの治療を受ける。その後同〇年〇月にe病院を受診し1ヶ月入院同〇年〇月に主治医の異動に伴ってf病院を受診しリュウマチに対する薬物療法、結節切除などの治療を受けた後、同〇年〇月からi病院に通院し、漢方薬治療、翌年には通院は中止した(通院困難になった為)しかし、漢方薬は続けていた。その後全身の倦怠感、関節の腫張、手の変形などが強くなった為、知人の勧めで当院を受診した。
・初診年月日:平成〇年〇月〇日 ・終診年月日:平成〇年〇月〇日 
・終診時の転帰:中止 
・初診より終診までの治療内容及び経過の概要:当院初診時関節の腫れ、痛み、手の変形を認めた。これに対し投薬や理学療法を行ったが症状は一進一退をくり返した。当院閉院により平成〇年〇月〇日が終診となった。終診時は足の腫れと両手首、両手指の腫張と痛み、変形、運動障害が顕著であった。この間平成〇年〇月〇日に身体障害者手帳(2級)の交付を受けている。
※ 上記の記載は、当時の診療録より記載したものです。
⑷ 審査官の照会に対するB医師作成の回答書(平成〇年〇月〇日付)の必要部分を摘記すれば、次のとおりである。
[照会]貴院で記載された受診状況等証明書(写添付)のうち、発病からの経過の部分も診療録などに基づいたものでしょうか、あるいは記載当日等の申し立てによるものでしょうか、ご教示願います。もし前者であれば、誠に申し訳ありませんが、根拠とされた診療録などの病名等記載部分、および既往歴記載部分のコピーを添付してください。
[ご回答]既往歴部分は申し立てによるものである。
⑸ 請求人がf病院の主治医であったと申し立てるC作成の請求人あての暑中見舞いのはがき(昭和〇年〇月〇日付。以下「本件暑中見舞いはがき」という。)が存し、その中に、「季節の変ります折柄御身体いかがでらっしゃいますか 呉々も御大切に過されますようお祈り致します」との記載がある。
⑹ 請求人の厚生年金保険の被保険者期間は、昭和〇年〇月〇日(資格取得)から昭和〇年〇月〇日(資格喪失)までの○月及び昭和〇年〇月〇日(資格取得)から昭和〇年〇月〇日(資格喪失)までの〇〇月の合計〇〇月である。請求人の国民年金の保険料納付済期間は、昭和〇年〇月から平成〇年〇月までの〇〇〇月である。
2 以上に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。
⑴ 本件発病日及び本件初診日について検討する。
発病日及び初診日が障害給付における受給権発生の基準日とされている趣旨からいって、発病日及び初診日に関する証明書類は、直接これに関与した医師又は歯科医師が作成したもの、又はこれに準ずるような証明力の高い資料でなければならないと解される。
以上の観点から本件を見るに、本件発病日は昭和〇年〇月ころであるとの請求人の主張を裏付ける証明力の高い資料の提出はなく、本件発病日を特定できる資料も本件資料上存しないから、本件発病日は不明であるといわざるを得ない。また、j病院・k病院・l病院・m病院及びn病院にはカルテ等の診療録が残っていないこと、n病院に係る診察券には傷病名の記載がないこと、本件暑中見舞いはがきの記載が当該傷病に係る診療の事実を直ちに推認させるものとはいい難いことなどを総合すれば、これらの病院を請求人が初めて受診したと申し立てるいずれかの月日をもって本件初診日とすることは相当でない。そして、本件受診証明は当時の診療録より記載したものであるとされており、それによれば、請求人は慢性多発性リウマチの治療のためo外科を平成〇年〇月〇日に初めて受診したものと認められるから、本件初診日は請求人が同整形外科を初めて受診した平成〇年〇月〇日であるとするのが相当である。
そうすると、本件発病日は不明であり、前記1の(6)の年金記録によれば、本件初診日において請求人は厚生年金保険の被保険者ではないから、第3の2に記載した関係法令の規定に照らし、請求人に障害厚生年金を支給することはできない。
⑵ 前記1の(6)の年金記録によれば、本件初診日において請求人は国民年金の被保険者であり、その前日における保険料納付要件も満たされているから、裁定請求日における請求人の当該傷病による障害の状態(以下「本件障害の状態」という。)を検討するに、本件障害の状態は、以下に記載するように、国年令別表に掲げる障害等級2級に該当する程度であると認められるので、請求人には、障害等級2級の障害基礎年金が支給されなければならない。
ア 国年令別表は、障害等級2級の障害基礎年金が支給される障害の状態を定めているが、請求人の当該傷病にかかわると認められるものとしては、「前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(15号)が掲げられている。そして、国民年金法上の障害の程度を認定するためのより具体的な基準として、社会保険庁より発出し、同庁廃止後は厚生労働省の発出したものとみなされて、引き続き効力を有するものとされている「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「認定基準」という。)が定められているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。
イ 認定基準から、請求人の当該傷病による障害の程度を認定するために必要な部分を抜粋すると、次のとおりである(第3第1章第7節(以下「本節」という。)/肢体の障害の「第4 肢体の機能の障害」)。
㋐ 肢体の機能の障害は、原則として、本節「第1 上肢の障害」、「第2 下肢の障害」及び「第3体幹・脊柱の機能の障害」に示した認定要領に基づいて認定を行うが、脳卒中等の脳の器質障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、多発性関節リウマチ、進行性筋ジストロフィー等の多発性障害の場合には、関節個々の機能による認定によらず、関節可動域、筋力、日常生活動作等の身体機能を総合的に認定する。
㋑ 肢体の機能の障害の程度は、運動可動域のみでなく、筋力、運動の巧緻性、速度、耐久性及び日常生活動作の状態から総合的に認定を行うが、2級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。 ① 両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの② 両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの③ 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの④ 四肢の機能に障害を残すもの
㋒ 日常生活動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができないが、おおむね次のとおりである。
①手指の機能a つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)b 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)c タオルを絞る(水をきれる程度)d ひもを結ぶ
②上肢の機能a さじで食事をするb 顔を洗う(顔に手のひらをつける)c 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)d 用便の処置をする(尻のところに手をやる)e 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ) f 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
③下肢の機能a 立ち上がるb 歩くc 片足で立つd 階段を登るe 階段を降りる  
㋓ 身体機能の障害の程度と日常生活動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりである。① 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。② 「機能障害を残すもの」とは、日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。( オ) 手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱う。
ウ そこで、本件診断書により、本件障害の状態を見てみると、頚椎は前屈〇〇度、後屈〇度と、参考可動域110度の2分の1以下に制限されており、握力は左右とも〇kg とされ、ほとんど計測できないほどである。上肢についてみると、関節可動域では、右手関節は背屈〇度、掌屈〇〇度、左は背屈〇度、掌屈〇〇度といずれも参考可動域の2分の1以下に制限されており、日常生活動作の障害の程度では、つまむは、左右とも「一人でできるが非常に不自由」、握るは、左右とも「全くできない」、タオルを絞る(水をきれる程度)、ひもを結ぶは、両手で「全くできない」、さじで食事をするは、右は「一人でできてもやや不自由」、左は「全くできない」、顔を洗う(顔に手のひらをつける)、用便の処置をする(尻のところに手をやる)は、左右とも「全くできない」、上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)は、両手で「全くできない」、用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)は、左右とも「一人でできてもやや不自由」、上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)は、両手で「一人でできるが非常に不自由」とされているから、「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」に相当する。さらに下肢について日常生活動作の障害の程度をみると、片足で立つ、歩く(屋内)は、「一人でうまくできる」、立ち上がるは、「支持なしでできる」、歩く(屋外)は、「一人でできてもやや不自由」、階段を登る、階段を降りるは、「手すりがあればできるがやや不自由」とされているから、「障害を残すもの」には当たらない程度の障害である。そうすると、本件障害の状態は、両上肢の機能に相当程度の障害を残すものに該当し、認定基準に照らせば、障害等級2級に該当する程度の障害の状態であると認められる。
⑶ 以上から、請求人には平成〇年〇月〇日をその受給権発生日とする障害基礎年金が支給されるべきであり、これと趣旨を異にする原処分は妥当でなく、取り消されなければならない。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。

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