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傷病手当金の根拠条文

健康保険法第九十九条
被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

通知・通達およびその解釈

各保険者において、傷病手当金の決定は、以下の保険課長通知、通達(解釈)等に基づき運用されています。

⑴「被保険者(任意継続被保険者を除く。)」
任意継続被保険者には支給されない。従前は任意継続被保険者にも支給されていたが、平成19年の法改正により任意継続被保険者は除くこととされた。ただし、資格喪失後の継続給付に該当する場合、任意継続被保険者であっても傷病手当金を受けられる。

⑵「療養のため」
当初は、保険給付として受ける療養のためと解されていたが、その後解釈が改められ、「保険給付として受ける療養のためにのみ限らず、然らざる療養のためをも含む。(昭和2年2月26日保発第345号)」こととなった。
たとえば、自費で傷病の療養をなした場合でも、 「その傷病の療養のため労務に服することができぬことについて相当の証明があるときは支給する。(昭和3年9月11日事発第1811号)」
また、「医師又は歯科医師について療養を受けない場合でも支給される場合がある。これには、病後静養した期間、疾病にかかり医師について診療を受くべく中途に費した期間等を含むが、この期間については、医師の意見書、事業主の証明書等を資料として正否を判定する。(昭和2年4月27日保発第345号)」、「療養は必ずしも保険医について診療を受けた場合にかぎらず、また、資格喪失後労務に服することができぬ期間についても支給し得る。(昭和4年2月20日保理第489号)」
いわゆる健康保菌者の取扱いについては、 「病原体保有者に対する健康保険法第1条第1項の適用に関しては、原則として病原体の撲滅に関し特に療養の必要があると認められる場合は、自覚症状の有無にかかわらず伝染病の病原体を保有することをもって保険事故たる疾病と解するものであり、従って病原体保有者が隔離収容等のため労務に服することができないときは、傷病手当金の支給の対象となる。(昭和29年10月25日保険発第261号)」
病気の静養と療養との関係については、 「病後の静養のために労務不能と認められる期間は支給する。(昭和6年3月6日保規第22号)(昭和32年8月13日保文発第6905号)」
なお、被保険者資格取得前にかかった疾病または負傷の資格取得後の療養についても、 「傷病手当金、療養の給付は支給される。(昭和26年5月1日保文発第1346号)」
また、療養のための労務不能であることを必要とするので、 「負傷のため廃疾となり、その負傷につき療養の必要がなくなったときには、労務不能であっても療養のための労務不能ではないので支給しない。(昭和3年10月11日保理第3480号)」
また、療養の給付の対象とならないもの、たとえば美容整形手術のため労務不能となったときには、 「療養の給付をなさないこととした疾病等について被保険者が自費で手術を施し、そのため労務不能となった場合には、これに対し傷病手当金は支給すべきでない。(昭和4年6月29日保理第1704号)」

⑶「療養のため労務に服することができないとき」
労務不能の基準は、 「必ずしも医学的基準によらず、その被保険者の従事する業務の種別を考え、その本来の業務に堪えうるか否かを標準として社会通念に基づき認定する。(昭和31年1月19日保文発第340号)」
したがって、休業中に家事の副業に従事しても、 「当該疾病の状態が工場における労務不能の程度のものであれば支給する。(昭和3年12月27日保理第3176号)」
医学的には労務不能でない場合でも、 「被保険者が療養の給付を受ける場合、保険医はその傷病は休業を要する程度のものでないと認定したが、被保険者の住所が診療所より遠く通院のため事実上労務の廃止を必要とする場合、この休業は広義に解し療養のため労務不能と解し、支給してよい。(昭和2年5月10日保理第2211号)」 「工場医が将来の悪化をおそれて現在労務に差し支えない者を休業せしめたとき、療養上その症状が休業を要する場合には労務不能とみなして支給してよい。
また、保険医甲は就労して差し支えなしとし、乙保険医は休業せしむべしとしたとき、保険者が労務不能と認めるのでなければ支給すべきものではない。(昭和8年2月18日保規第25号)」 「被保険者が齲歯の治療を受けようとするとき、4、5里先に行かなければ治療を受けられぬときには、その症状が欠勤しても診療を受けることを必要とする場合には、療養のための労務不能とみなし傷病手当金を支給する。(昭和6年3月11日保規第31号)」 また、他の軽易な労務に服し得る程度の疾病または負傷であっても、従前の労務に服し得なければ労務不能であり、他の軽易な労務に服することができるという理由で支給を拒むことはできない。 「幾分でも生計の補いとするために副業ないし内職のような本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない労務に従事したり、あるいは受け得るはずの傷病手当金の支給があるまでの間の一時的なつなぎとして軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合その他これらに準ずる場合には、通常なお労務不能に該当するものであること。 したがって、被保険者がその提供する労務に対する報酬を得ている場合、その故をもって直ちに労務不能でない旨の認定をすることなく、労務内容、労務内容との関連におけるその報酬額等を十分検討のうえ労務不能に該当するか否かの判断をされたいこと。(昭和49年8月6日保険発第86号・庁保険発第17号)」
しかし、 「医師の指示又は許可のもとに半日出勤し、従前の業務に服する場合は支給されない。また、就業時間を短縮せず配置転換により同一事業所内で従前に比しやや軽い労働に服する場合は支給されない。(昭和29年12月9日保文発第14236号)」 「午前中のみ出勤し従前の業務に服する場合は通常支給されない。(昭和32年1月19日保文発第340号)」 なお、資格喪失後傷病手当金を受ける場合、または任意継続被保険者で失業している者が傷病手当金を受ける場合の労務不能の程度とは、 「工場又ハ事業場二於テ従事シタリシ当時ノ労務二服スルコト能ハサルト同程度ノモノヲ謂フモノトス(昭和2年4月27日保理発第1857号)」 労務不能とは認められず、したがって、支給しない事例としては、 「労働基準法第51条(現行労働安全衛生法第68条)により伝染の恐れある保菌者に対し事業主が休業を命じたがその者の症状からして労務不能と認められぬ場合の傷病手当金の請求は、法上労務不能と認められぬので支給しない。(昭和25年2月15日保文発第320号)」 「失業保険金を離職後5ヶ月間受給したことは労働の意思及び能力があったという認定が職安でなされたのであって、労務不能を支給要件とする手当金の支給は受けられぬ。また、失業保険では、疾病又は負傷のための労務不能は、その期間が継続して15日未満のときは一時的な労働力の喪失としてこれを例外として取り扱っている(失業保険法第16条第2項第1号)ので、一時的労務不能と職安が認定して失業保険金を支給したものであれば、離職前から現在まで療養のため労務不能でかつ療養の給付をひきつづき受けている旨証明して、失業保険金を返納し、改めて傷病手当金の支給を申請しなければならない。(昭和29年3月4日保文発第2864号)」 次に健康保険の被保険者で、現に、労働者災害補償保険法による休業補償費の支給を受けている労働者が、業務上の事由による疾病または負傷による療養をなお必要とする期間中に業務外の事由による疾病または負傷を併発し、これに関する療養のためにも労務不能と認められるような状況になった場合には、傷病手当金をも支給すべきであろうかという、いわゆる業務上外の併給の問題があり、長い間明確に解決が得られなかったが、昭和33年6月に法制局の意見が出され、次の通知のように、「休業補償費の額が傷病手当金の額に達しないときにおけるその部分にかかわるものを除き、傷病手当金は支給されない」。すなわち、併給はしないこととされている。

⑷「その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から」
労務不能となった日から起算し3日間は待期と称し、この期間は傷病手当金を支給せず、待期を経過し第4日から支給を開始する。したがって、3日の待期期間中は、報酬も受けられず、傷病手当金の支給もない。待期を設けた理由は、虚病防止のためといわれている。
なお、待期は、労務不能の目が3日連続して初めて完成する。 「待期は、労務不能状態が3日間連続することが必要であり、かつ、これをもって足り、「休,休,休,休」の場合は待期完成であるが、「休,出,休,休」は待期は完成していない。(昭和32年1月31日保発第2号の2)」
労務不能となった日の取扱いは、 「就業時間中に業務外の事由で発生した疾病について労務不能となったときに、その日は待期3日に包含されその日に賃金の全部又は一部を受けていたか否かは問はない。(昭和3年7月9日保理第1719号)(昭和5年10月13日保発第52号)(昭和28年1月9日保文発第69号)」 したがって、当日の業務終了後事故が発生したときは、その翌日から起算する。 期間の計算については、 「工場又は事業場で昼食交代して作業を続行するため夜勤のものが午後6時から翌日午前6時まで勤務し一日の作業ではあるが、2日にまたがるような場合には暦日による。(昭和4年12月7日保規第488号)」
次に、ある疾病または負傷については待期が完成し、傷病手当金の支給を受け、その後一たん労務に服し、再び同一の疾病または負傷について労務不能となったときの待期の取扱いは、 「最初に療養のため労務に服することができなくなった場合においてのみ、待期を必要とする。(昭和2年2月19日保理第700号)(昭和2年2月11日保理第1085号)(昭和2年6月疑義事項解釈)(昭和2年9月5日保理第3222号)」 たとえば、8月3日から8月5日まで3日間、8月7日から8月9日まで3日間、8月11日から8月12日まで2日間同一の疾病または負傷のため労務不能のときは、8月3日から5日までにおける待期の完成により、8月7日、8日、9日、11日、12日の5日間は、傷病手当金の支給を受けることができる。
「3日を経過した日を経過した日から(第4日より)」の解釈については、 「療養のため欠勤したが、この欠勤開始の日から3日間を年次有給休暇として処理された場合にも、給与計算上の欠勤開始日(前記欠勤開始日第4日目にあたる。)から支給される。(昭和26年2月20日保文発第419号)」 また、「第4日より」とは、労務不能の状態が連続4日以上あることが必要か、または連続3日間労務不能で第4日目に労務に服し、第5日目以後再び労務不能となったときも該当するのかについて疑間が生ずるが、これについては、 「第4日よりを第4日以後と解し、療養のため労務に服することのできない状態が同一傷病につき3日間連続していれば、すでに待期は完成したものとして取り扱われたい。 したがって、 ㋑「休,休,休,休,出,休」 ㋺「休,休,休,出,休」 の何れの場合でも待期はすでに完成しており、㋑の場合は第4日目、㋺の場合は第5日目から支給を行う。(昭和32年1月31日保発第2号の2)」

⑸「労務に服することができない期間」
労務不能期間中に公休日がある場合、 「工場の公休日であっても療養のため労務に服することができない状態にあれば支給する。(昭和2年2月5日保理第659号)」

⑹「支給する」
被保険者が死亡したときは、 「死亡当日はなお被保険者の資格があるのでその日の傷病手当金は支給すべきものである。(昭和32年3月4日)」
また、 「民法の規定による相続人が当然請求権を有する。(昭和2年2月18日保理第719号)」 また、事業主が保険料を納めない場合でも、 「事業主の保険料未納を理由としては、被保険者が傷病手当金を受けられないことはない。(昭和25年3月9日保文発第535号)」


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