審査請求!

審査請求

「社会保険の審査請求制度」とは

社会保険の審査請求制度とは、特別の権利救済制度です。行政が不当な処分をした場合に、「行政不服審査法」による審査請求をすることはできますが、社会保険に関してはこの一般的な制度ではなく、健康保険法第189条のほか「社会保険審査官及び社会保険審査会法」の規定により、特別に「社会保険の審査請求制度」が設けられています。
特別に審査機関を設けている理由は、まず社会保険に対する審査請求の件数が多いこと、そのうえ内容が複雑多岐にわたり、専門性が高いということ、さらには、社会保険が被保険者やその家族などの生活安定を図ることを目的としているからです。侵害された権利・利益に対する救済は、被保険者が費用を負担することなく、簡単な手続きで、迅速かつ公正に行われることが特に必要だと判断されているのです。
国民年金・厚生年金保険の年金給付、健康保険の保険給付、被保険者の資格や標準報酬など、社会保険に関する決定に不服があるときは、その決定があったことを知った日から3月以内に、各地方厚生局の社会保険審査官に対して「審査請求」をすることができます。

では、実際にはどのような審査請求制度の利用があるのか、一例をあげてみます。
<障害年金>
肢体の機能障害による障害等級2級の障害基礎年金を受給していたが、診断書(現況確認届)を提出したところ、障害の程度が2級に該当しないとして障害基礎年金が支給停止となった。そこで、主治医の障害の程度に関する「意見書」を添付して社会保険審査官に審査を求めると、審査の結果、数ヶ月後に2級の障害基礎年金が再び支給されることになった。
<障害年金>
当該傷病の発病日が提出した書類では確認できないとして障害年金を支給しないとされたが、受診状況等証明書、医師の意見書を添えて、再審査請求したところ、腎炎の発病から約11年間の就労状況を鑑み、長期間、キャリアを中断することなく勤務を続けていた場合には、当該傷病につき医療を行う必要が明らかにあったことを示す特段の事実とか、勤務内容が通常とはいえなかったことを示す特段の事情等がない限り、社会的治癒があったものと推定するのが相当として、その後の初診日が認定され要件を満たすこととなった。

※ 障害年金-社会保険審査会裁決例
主な容認事例はこちらから 社会保険審査会裁決例

「社会保険審査官」と「社会保険審査会」の二審制

次に、社会保険の審査請求制度は、「社会保険審査官」と「社会保険審査会」の二審制になっています。
<社会保険審査官>
審査請求がされると、社会保険審査官が審査に着手します。社会保険審査官は健康保険や年金制度に精通した厚生労働省の職員で構成されており、各地方厚生局に常駐し、厚生労働大臣が任命しています。社会保険審査官の決定までには約2~3ヶ月かかるのが通常です。決定内容には「容認」「棄却」「却下」があり「容認」は請求人の不服申立てが認められたことを指します。「棄却」は請求人の不服申立てが認められなかったという場合です。そして「却下」は、審理に入る前に審査請求を受理できないという意味になります。
<社会保険審査会>
一審の社会保険審査官の決定について不服がある場合は、厚生労働省内に設置されている社会保険審査会に再審査請求することになります。また保険料の賦課、徴収、滞納処分に関する不服申し立てについては、直接この社会保険審査会にすることになります。社会保険審査会は、委員長と5人の委員によって構成されています。委員は元裁判所の判事や元独立行政法人国立病院機構病院長、社会保険労務士、民間企業出身といった人達で、国会の同意を得て厚生労働大臣によって任命されます。審議は3人の委員による合議により裁決されます。審理は通常公開で行われ、再審査請求人や代理人は、意見を述べることができます。「容認」「棄却」「却下」の裁決まで8か月程度を要しています。この社会保険審査会の裁決に不服がある場合、さらなる不服申し立ては裁判所へ提訴ということになります。
     関東信越厚生局審査請求取扱状況             社会保険審査会裁決状況
最後に、審査請求をするにあたって、社会保険の制度は複雑で、わかりにくいことが多くあります。健康保険協会や日本年金機構の言い分に納得がいかないからといってすぐに審査請求するのではなく、まずは、受け取ろうとしている保険給付についての説明を保険者から十分に聞くことが必要です。
いずれにせよ、保険給付制度に関して理解をする意思を持つとともに、疑問点や不服な点については納得いくまで、その処分を行った保険者(健康保険協会や日本年金機構等)に聞くことが最も大切であるといえます。


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