代理・代行による審査請求事件~容認事例~
平成29年(健)第〇〇〇〇号 平成30年6月29日裁決
主 文 後記「事実」欄第3の3記載の原処分を取り消す。
事 実 第1 再審査請求の趣旨 再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、健康保険法(以下「法」という。)による傷病手当金(以下、単に「傷病手当金」という。)の支給を求めるということである。 第2 事案の概要 本件は、うつ病(以下「本件請求傷病」という。)の療養のため労務に服することができなかったとして、平成28年5月9日から同年10月31日までの期間について、傷病手当金の支給を請求した請求人に対し、〇〇健康保険組合(以下「保険者組合」という。)が、平成29年3月31日付けで、平成24年11月29日で期間満了となったためとして、傷病手当金を支給しない旨の処分をしたことを不服として、請求人が、標記の社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をしたという事案である。 第3 再審査請求の経緯 1 請求人は、うつ病(以下「既決傷病」という。)の療養のため労務に服することができなかったとして、平成23年5月30日から平成24年11月29日までの期間、傷病手当金を受けていた。 2 請求人は、本件請求傷病の療養のため労務に服することができなかったとして、平成28年5月9日から同年6月10日までの期間(以下「請求期間A」という。)、及び、同月11日から同年7月31日までの期間(以下「請求期間B」という。)について、平成28年10月20日(受付)に、同年8月1日から同年10月31日までの期間(以下「請求期間C」といい、請求期間A及び請求期間Bと併せて「本件請求期間」という。)について、平成28年12月2日(受付)に、保険者組合に対し、傷病手当金の支給を請求した。 3 保険者組合は、本件請求期間について、平成29年3月31日付で、請求人に対し、「傷病手当金を受給できる期間が平成24年11月29日で期間満了となったため。(健康保険法第99条第2項)」との理由により、傷病手当金を支給しないとの処分(以下「原処分」という。)をした。 4 請求人は、原処分を不服とし、関東信越厚生局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をした。
理 由 第1 問題点 1 傷病手当金の支給については、法第99条第1項において、「被保険者が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。」と規定されている。 また、傷病手当金の支給については、同条第4項において「傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して1年6月を超えないものとする。」と規定されている。 2 本件の場合、既決傷病に係る傷病手当金の支給を始めた日から起算し、法定給付期間(1年6か月)を超えた請求であるという理由により傷病手当金を支給しないとした原処分に対し、請求人はこれを不服としているのであるから、本件の問題点は、本件請求傷病について、平成23年5月30日から支給開始された傷病手当金の支給対象である既決傷病と同一の疾病又はこれにより発した疾病と認められるかどうかということである。 第2 審査資料 「(略)」 第3 事実の認定及び判断 1 「略」 2 前記認定の事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。 ⑴ 本件請求傷病と既決傷病とは同じ「うつ病」であり、本件請求傷病の療養の給付開始年月日(初診日)が平成22年2月20日であって、○○○○クリニックに月1から2回の通院を継続していることから、既決傷病と本件請求傷病は医学上同じものであると考えられる。 そこで、請求人が職場復帰した平成24年12月以降に社会的治癒と認めることができる期間が存したかどうか検討する。 まず、請求人は、○○○○クリニックに継続通院しているが、その回数を見ると、平成25年4月までは月2回、その後はおおむね月に1回と減じている。 次に、平成24年12月から平成28年4月までの期間における請求人の勤怠状況をみると、平成24年12月14日に職場復帰してから平成25年6月までは欠勤がなく、その後も月に数回休んだ程度であったが、平成27年11月から欠勤が増えたことが認められる。 さらに、賃金の支給内容をみると、平成25年1月、同年7月から平成26年3月まで、並びに平成27年3月及び同年4月に遅刻早退欠勤控除があり、同年11月以降は遅刻早退欠勤控除額が多くなっているが、平成25年6月から平成28年6月までの期間において毎年6月に基本給、職能給及び地域給の合計額が増額していて昇給があったことが認められ、平成25年3月から平成27年12月の期間において時間外勤務手当の支給があることから時間外勤務を行っていたことが認められる。 そうすると、通院を継続しながら、少なくとも平成27年10月までは一般人と同様に勤務をして時間外勤務も行っていたが、その後、症状の再燃に至ったものと認めることができる。 ⑵ 以上によれば、請求人が復帰した後の平成24年12月から平成27年10月頃までの期間は、社会的治癒と認められる状態にあったものというべきであり、傷病手当金の支給に関しては、本件傷病は既決傷病と同一の疾病ではないと認めるのが相当である。 3 したがって、本件請求傷病が既決傷病と同一の疾病であるとして、本件請求期間に係る傷病手当金につき、法定給付期間を超えた期間に係るものであることを理由に支給しないとした原処分は相当とはいえない。 よって、原処分を取り消すこととして、主文のとおり裁決する。